3時過ぎに登山口駐車場に到着すると、すでに50台ぐらいの車がいた。流石に3連休ですね。しばし夜明けまで仮眠。珍しくエンジンかけっぱなしの迷惑な車は1台しかおらず、比較的快適に睡眠できた。まだ入り口なのに、すでに俗な世界から解放された感じがしていた。
息子が眠いというので、日が昇ってから用意して7時少し前に出発。僕も夜中に肉を探して彷徨って時間をロスしたので眠いから丁度良かったんですが、もうすでに日差しが凄くてサングラスが必要なぐらい暑かった。
尾白川渓谷沿いを歩いて甲斐駒ケ嶽神社にお参りした後、テンションの上がる大きな吊り橋を渡る。眼下に広がる尾白川の水がものすごく綺麗です。本物の南アルプスの天然水です。
いやあ憧れでした。南アルプスの天然水といえば、僕の好きなシングルモルト、白州の仕込み水です。こんなに綺麗だから美味しいんですね。なお、水場は七合目の七丈小屋までありません。ここから約2,000m登った先までおあずけ。
吊り橋を超えると直ぐに登りに取り付きます!覚悟はしていたけど、谷川岳の西黒尾根そっくりな、いきなりの急登です。
しばらくすると、すぐに道はなだらかになり、祠などがたくさん現れて来ました。しかも苔むしていていい感じ。昔修験道だったから期待していたけど、こんなに下からいい感じの祠が沢山出てきて楽しみながら登っていきます。祠といえばドラクエかな。お宝あるかな、などと息子と話しながらブラブラと登って行きます。
また、フラットな所も多いのですが、ご覧の大荷物、特に外付けは揺れるので走る事は出来ませんでした。一応、手で押さえれば走る事が出来ますが、まあ登りですし、普通に行きましょう。
下りは走って楽しめそうですしね。
写真スポットが多く、歩みは遅いけど、こんなに息子としゃべったのも久しぶりで良かったし、息子はこんなに写真を撮ったのも初めてで、夢中で何枚も撮影していました。
横手にある駒ヶ嶽神社からの登山道との分岐である、横手白須分岐を過ぎると、いよいよ急登の連続となった。ちなみに尾白川の方は竹宇(ちくう)駒ケ嶽神社と地元では言うらしいのですが、地図には両方とも甲斐駒ケ嶽神社と書いてありますので、少しややこしいです。
この分岐では中年カップルの女性が疲れ果てて転がっていた。確かにここまでも辛い道のりだったけど、ここでへばっているなら七丈小屋も厳しいだろう。まあ、彼がいるから平気だと思うけどね。
ここから山頂まで7時間との道標。少し休んでNINJAエナジーを補給して急登に向けて出発。
まずは根っこが沢山の登り。緑が多くて芝のゴルフ場を歩いているような景色が広がります。
しばらく笹を楽しみながら登ると、今度は苔に包まれた景色が広がってきた。そして段々と岩が大きくなっていく。「この岩はどこからきたんだろう。噴石にしては大き過ぎるね。こんなに大きなのは飛んでこないよなあ。大昔、駒ケ岳が噴火したのかな?いや、海底から隆起したんじゃない?ところでこの岩、スーパーマリオのボスキャラに似てるよね。回転しながら火をふく奴」いろいろ想像したことを息子と話しながら、いつのまにか高度を上げていました。
巨岩の上に苔が生え木が生い茂る。それが何体も続いている。この風景、どう見ても「風の谷のナウシカ」に出てくる王蟲が集団で停止して朽ち果てたようにしか見えません(笑) と言う事は、今いるところは腐海ですね。まずいですね、5分で肺が腐ってしまいます!マスクをしなさい!1人で盛り上がるたりぃさんですが、一度見せた息子も覚えていた。宮崎アニメって世代を問わずに人気な理由が、ノンフィクションのような場面がたくさん出てくるからだと思うんですね。宮崎さんが黒戸尾根を登ったのかどうかはわかりませんが、なにかいろいろ面白い景色に出会えて楽しい道のりです。
楽しい緑の苔が少なくなってくると、徐々に道自体が岩の上を行くようになってきた。岩場が大好物なので更にテンション上がってきた頃、やってきました刃渡り!
これが刃渡りです!地図では2箇所ある危険箇所のうちの一つに指定されているところ。しかし、このあたらからちょうどガスってきた事もあって眺望がなく、斜度も少なく見えて、鎖も固定式のしっかりしたものがあるので、まあ怖くはなかったです。
私は鎖を使わず、ストックを片手で持ったまま楽々通過。なんだ、楽勝だな、黒戸尾根。しかし、今思えば、そう思ったのはここだけだった。ちなみに最近体重が増えて膝に多少の不安があったので、緑のテーピングをして行きました。普段はレースの時しかしないんですけどね。
刃渡りを超えると斜度が急にきつくなり、歩行技術も多少必要になってきた。案外滑るし、幅も狭くなる。
そしていよいよはしご場が登場。大きい鉄とコンクリート製の梯子なので安全ではあるが、ほとんどの場合、岩場と崖が組み合わさっているし、一つ一つはしごの角度が大きく変わるので、はしごを登る技術はかなり必要な印象。この辺りでは、ストックを持ったままでは危ないのではしご場の下であらかじめ仕舞って行ったが、仕舞わずに登ってしまい途中で立ち往生する人が多数いて、結構な渋滞になっていた。初心者連れのパーティは大変だなあと思ったのですが、初心者を連れていたらリーダーが指導しないといけないものなんだけど、どうもリーダーらしき人はおらず全員初心者のようだった。よく黒戸尾根をルートに選んだなあと驚きます。
岩も段々と厳しくなっていく。ワクワク感が止まらない。
しばらくすると快晴になってきました。右手に別の急峻な尾根が見えるようになってきて、更にテンションが上がる。地図によるとあの尾根は日向八丁尾根と言うらしい。実に美しい稜線です。
そして険しい岩場の陰には、巨大な剣が鎮座していた。「エクスカリバーか!」思わず声に出る。見た事ないけど、こんなに大きな剣は振り回せないな。それにしても冒険をしているワクワク感がどんどん高まって行き、まるでロールプレイングゲームをしているかのよう。息子も楽しいらしいが、ドラクエをドラクエIからやった中年のたりぃさんの心にはぐっと刺さるものがありました。楽しすぎます!
そしてついに!垂直はしごが現れた!垂直岩場に垂直はしご。その下も横も全て崖。自らの腕力と脚力を信じて一歩一歩丁寧に登るしかないはしご。しかも大荷物を背負って。こんな経験は今までしたことがない。それが次から次へとどんどんやってくる。どこまで上がるのか、このワクワク感とアドレナリンが流れる感じと、恐怖感、そしてそれを乗り越える勇気。最高じゃないか!
息子に続いて垂直はしごを登り切った先も崖っぷちに絶景が広がる。足がすくむという言葉の遥か上を行く場所。いや、足がすくんでいる暇など微塵もないのだ。昔から、神に近づくものには容赦のない試練があり、それを乗り越えた者だけが神々と会う事ができたんだ。それを実感できる崖がしばらく続きます。
さらにいくつかのはしごを登ると、ついにははしごが無くなり、鎖だけの壁が目の前に現れた!「マジか!」思わず息子と顔を見合わせて出た言葉。そんな本音の言葉しか出ない場所に来た。僕が記憶している幼少時代の軽装状態と違って、今はキャンプ道具を背負っている。しかも身体は当時の倍はある。本当に登れるのか?!見る限り、足場は1,2か所しかないが、そこは届かない距離に見える。少し考えている間に登りが大好きな息子が先にスルスルと登って行った。息子はもう僕より足が5cmも長い。僕も届くかな?
脚を少しO脚にして足場を確保し、鎖との2点支持で一気に上へ。なんとかクリアしました。
崖を離れて少し森になってきたら、間も無く七丈小屋へ到着しました。時間はもうすぐ13時。標高2,200mあるはずだけどご覧の通り快晴で大変暑い。お腹も減ったし、予想以上に神経を使って疲れたので、今日はここでキャンプする事に決めました。
ちょうど6時間かかりましたが、実に充実した時でした。
次回はメインイベントの一つ、標高2,000m超えでのBBQキャンプの事を綴ります。
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