初参加のSTY完走から2週間。まだ感動冷めやらぬ状態です。
トレランを始めて約2年が経ち、憧れのUTMF姉妹レースSTYに参加して完走する事が出来ました。このレースにどのように挑んだのか、長文になりますが、まとめてみました。初STYの方には参考になると思います。
<UTMFへの憧れ>
2年前、元MTB仲間のhokaさんから紹介され、地元であるからという軽い理由で参加した外秩父トレイルラン(44km)でトレイルランの魅力に一瞬で取りつかれました。
MTBのガツガツした感じのスタートと違い、お祭りパレードのようなスタート、地元民の温かい応援、街を抜け、河を渡り、野山を登って、尾根道を縦走。エイドではおいしい食べ物と温かい声援。感動のゴールと温泉、ビール。なんでこんなに楽しい事が詰まっているんだろう。
しかしわずか22km進んでリタイヤ。楽しすぎて下りをガンガン攻めすぎ、足がなくなってしまったのでした。その他、ザックは千円の安物、補給食なし、ウエアはTシャツ、テクニックなし、走力なし、と今思えば完走できない条件は他にもたくさんありました。
そんな時NHKのランスマに鏑木さんが登場し、鎌倉の山中でのトレイルランの極意を見た。
そして翌年、無事に43kmを走り切ってトレラン初完走。ものすごい充実感を味わうと同時に、UTMFのポイントを1ポイントもらえました。なんだろ、UTMFポイントって。。。ググってみると日本最長の富士山一周トレイルレース。AmazonでUTMF2014DVDが五つ星になっていたので、即ポチって翌日閲覧。さっそく見た僕は、その映像と音響もさることながら、そのレースのドラマの壮大さにとりつかれてしまい、なんだかわからなかったUTMFが一瞬にして憧れの対象となってしまいました。東京マラソンを初出場で完走したとき、残念ながら僕は笑顔にはなれなかった。でもUTMFの完走者はみな満面の笑みを浮かべていた。涙を流している者までいる。なぜだろう。。。僕も笑顔になりたい。走り切ったら笑顔になれるのではないか。そう思ったのです。
これは、すいませんが、回し者です!と言いたいぐらいに全てのトレイルランナー、富士山好き、山好きに見てほしい。
<前哨戦、SPA Trail 72km>
しかし、167kmのUTMFに対してSTYは富士山を半周して80km走ります。しかし、この長さは想像ができません。ロードでさえフルマラソン42.195kmしか走ったことがなく、しかも東京マラソンを2回だけ。トレランも43kmを2回だけ。そのため、3か月前のSPA Trail 72kmレースに申し込みました。野反湖は大好きな湖で、もう何度も足を運んでいるところ。地の利はある、と思いましたが、甘かった。そもそも長い長い登りで息が上がって登れない。更に雨が上がったからという理由でロードシューズで出走してしまったため泥に足を取られて進めませんでした。50kmまで行き、登れる足もなくなりリタイヤ。悔しいけど実力通りの結果しかでないのがトレイルランなのでしょう。
しかしながら、旅としてはとてもよかったですよ。生の鏑木さんと初めてお会いして、ますますUTMF熱が上がってきました。
<日々の練習>
そこから17kmランを週3回取り入れ、走力アップおよび維持に努める。
通勤時の駅階段を1段抜かしでダッシュして駆け上がり。昼休みは会社の非常階段の上り下り。これを3か月続けるとあら不思議、登りで息ががる事がかなり減ってきていました。
<特訓登山、杓子山と雲取山>
そしてUTMF完走経験のある友人の案内で、杓子山&雲取山で特訓。
まず杓子山では岩場の登りと下りを体験。こんなすごいところを走ったのは初めてだったけど、子供のころの遊び場が山寺の修行道であった僕にとっては、岩場の登りは全く問題なく、3点か2点支持で楽々登ることができました。下りを走って降りるのは恐怖だが、抑え目に行けばなんとか下れる事が判明。杓子山は意外と楽に登れるという事がわかり、精神的に楽になりました。
そして雲取山往復50km、11時間。これはSTY本番を想定した装備で挑みました。もちろんエイドがないので食糧は多め。登りはあれだけ階段で練習したのに辛い。しかし友人を見ていると、小股で、両手を太ももに押し当て、足をなるべく上げずに迂回し、急坂ではジグザグに登っている。対して僕は直線的に上っている。DVDでは皆こうだったが、完走狙いの僕がやっては体力を消耗するだけなのだ。真似してみると結構楽になってくる。更に心拍を下げるために呼吸を多めにするために、足の運びと呼吸をシンクロさせるのをやめて、口を狭めて足より頻繁に呼吸をする事をしてみると心拍も落ち着いてきた。あわや練習でDNFか?と一瞬、脳裏をよぎったが、尾根道に出たころはそれも過ぎ去り、すっかり走れるようになっていた。
それからは、可能な限り止まらないように走ったが、もし走れないときは自分を競歩選手だと思って歩くとタイムを稼げるとのアドバイスをもらい、実践してみると、膝へのインパクトが少ないまま、心拍を下げた状態でかなり早い速度で歩ける事がわかり、後で、飛ばしてしまいがちな下りでも抑止力が働くことがわかり、心身共に大きな効果がありました。
11時間という時間を食べ続けるためには、胃腸がやられない事が大事だとのアドバイスから、胃腸薬を用意してあらかじめ飲み、好きなチキン/お魚類のおつまみフードを持ち、コーヒーに羊羹、まずいけど効果があるというVespa Hyperも試してみた。その結果、チキンとコーヒー、そして焼き芋羊羹、それからカップラーメンという者たちが大好きで効果がある事がわかり、友人にもらった生姜黒糖も口どけが良くて疲れているときでも食べられる事がわかった。Vespa Hyperは最高に不味いが、体の芯からパワーが出てくるという意味では大きな効果があることがわかった。この、食べられるものを見つけたという意味で、この旅はとてつもなく大きな効果を僕に与えてくれた。
そして10時間後には完全に日没し、暗闇の中の登山道ダウンヒルを初めて経験し、登山用のペツルTIKKA XP(旧型)75ルーメンのヘッドランプでは明るさが足りないものの、昼とは比べ物にならないぐらいの集中力をもって足を置くルートハンティングしなければならない事を体験し、後半はその面白さに我を忘れるほど。明るいライトさえあればどんどん突っ込んで走れる事がわかり、本番はGentosの閃 325(SG-325)、150ルーメンのハンドライトを併用する事を決めた。
<富士山登山の意外な効果>
お盆休みに家族で富士山に登りました。実は富士山は見る山だという思いがあり、混んでいるという噂の富士山登山には興味がありませんでしたが、せっかく富士山一周レースに出る事だし、山頂から富士山一周レースのコースを眺めてみようと思い、初登山となりました。
この旅は小学生の子供と行った事もあり、かなりゆっくりペースで登りましたが、富士山独特の火山岩の登り下りは、通常の足の運びではスリップして筋力を使ってしまい、精神的なダメージも大きい事がわかりました。このためスキーのように足裏全体で着地する事を意識し、可能な限り小股でトルクをかけないように登り、滑った場合は反対の足に素早くステップをする事をすれば、スリップは最小限にできる事がわかりました。
また、登りの間は下りが一切ないため、延々と登りを登り続ける練習にも大変効果がありました。
更に、酸素が薄いため高山病にならないためにしっかり呼吸をして酸素を取り入れる練習にもなりました。これはグレートトラバースで田中陽気さんがやっていた、口をすぼめてビュービュー言いながら酸素をたくさんはき出し吸い込む事をしました。
水に溶かす酸素をハイドレーションに注入しておくと大きなサポートになります。
以上のような富士山登山の経験は、太郎坊への、火山岩でできた登りを登るときに大きく役に立つ事になりました。
<STY2015へ>
レースではUTMF DVDで想像が膨らんだような感動した体験ができるのだろうと期待していました。しかしそれをはるかに上回る濃密な20時間が僕を楽しませてくれました。
私の初STY目標は、ズバリ完走でした。20時間をたっぷりかけて富士山の周りを楽しむ事が目標。そして二番目はエイドステーションのおもてなし料理を堪能する事です。外秩父トレイルランに出て以来、おもてなし料理のおいしいレースに出たくて仕方がなかったのです。
しかし、大きな試練がいくつも待ち受けていました。我ながら、よく完走できたと思います。でもこの試練を乗り越えるのがトレイルラン、ウルトラトレイルの楽しみの本質なのかもしれません。
<スタート こどもの国>
天気予報は一週間前から雨予報でした。何とか台風直撃は避けられたものの、前日の金曜日、UTMFスタート日も雨、土曜日も当然のように霧雨でしたが、雨脚は弱まりつつあり、濃霧もひどくはありません。豪雨のスタートでなかったので気分は比較的良かったのですが、代わりに装備で迷いまくり、車との間を3往復。結局、バイザーは装着、サングラスはリュックの中、ショートゲイターを装備、にて出走しましたが、ゲイター以外は、一度も晴れなかったので不要だったと思います。
そうこうしている間に、一番後ろからスタートと思っていましたが、なんとなく中盤でスタート。そうするとイントロ曲がなんと、あーあーあーあーあーあー、から始まるUTMF DVDのメインテーマ曲です!テンションが上がります!!うひょー!ペースも上がります!周りも上がる上がる!
この感じ、東京マラソンのスタートと似ていて、危険な臭いがしてきたので、いったん端に立ち止り、水を飲んで深呼吸。ほぼ最後尾からゆっくりペースで再スタート。序盤は抑えていく方針を貫きます。
しかし林道を進むと大渋滞が発生。山道の入り口で詰まっています。10分は止まったでしょうか、そして山道に入ってからもところどころで渋滞が。牛歩ながら進んでいると、後ろの全身サロモンで走れそうな人が、「おーい、がんばれよー。もう関門時間ギリギリペースだぞ~!」「このまま舗装路かダブルトラックがなければ確実にアウトだぞ~。がんばれよ~!」と何度も語っています。この時、確かにあと30分程しかないのに、渋滞にはまっていた。いきなり最初の関門アウトは勘弁してほしい。みな小走りで少し行くと、まもなく舗装路に出た。そこからはダッシュです。でも無理はしない。少なくとも無理な追い越しはせずに立ち止まらない事を意識して下る。下る。今年から追加された富士山資料館までの道のりは長い。草原に出たら、今度は泥沼がところどころに隠れている。いきなりブーツに浸水があり、心のダメージがあったが、少し走ったら気にならなくなった。それにしても遠い。少しペースを上げてやっと到着すると、応援の家族が今か今かと待ち構えていた。もうダメかと思った、との言葉通り、タイムは関門時刻13:50の8分前。渋滞のせいで1:42もかかった。結構危なかった。
<A5富士山資料館にて初エイド>
ギリギリだったので、名物のすその水ギョーザは残っているはずもなく(13:00で終了だったと聞きました)、あんぱんとスープとバナナを掻き込んで8分休憩して出発。十分に食を楽しむ計画が早くも崩れる。もっと早く進まなければこの先もおもてなし食を楽しめない。そう考えたら走る気力がわき出てきた。しかもゲイターを装着していた事もあり、足場が悪い事はほとんど苦にならなくなっていた。そして無事に最初のエイドを通過できた事がうれしくて仕方がなかった。
<A6 太郎坊への登り>
この区間は、今回で一番楽しめたと言える。清流が流れ、いかにも旅の雰囲気をもつシングルトラックを延々と登る。雨も上がって幻想的な湿地の雰囲気。奥深い山々が、少し固まった泥団子と共に迎えてくれる。泥団子の登りなので当然のように大渋滞であったが、それが、焦らずゆっくり進む事に役立ってくれた。そしてスローなペースで進むうちにエンジンがかかってきた僕は、練習の成果もあり、ほとんど休まずにガシガシと登り続ける事が出来た。太郎坊手前は、非情なまでの火山岩の登りが続くが、富士山登山での練習の成果で、ほぼ立ち止まることなく何人もの人をパスする事が出来た。登りが楽しいと感じたのは、人生初の出来事であった。素晴らしい発見、素晴らしい経験、まだまだ新しい事を感じることが出来る。辛いけど楽しいんだよね。
A6太郎坊には、1時間延長された関門時間17:50の35分前、17:15に到着できた。どうだ、みくりやそば!スイーツ!期待を寄せたが、残念なことにここでもすでに売り切れとの事、かなりがっくり来た。心が少し痛い。仕方なくまたしてもバナナとオレンジと水のみをもらい、がまんするしかない。しかし、ここから先は得意な下り区間。次は絶対におもてなし食をいただく。少し疲れていたので、パワーを注入するために、胃薬を飲んだうえで持参したチキンやVespa Hyperを投入し、10分休憩の後、足早に暗闇の道を駆け下りて行った。
なお、食べるのが大好きなので、このような高低差のわかる地図にエイドで提供されるものを書き込んで常に参照できるようにしている。これでモチベーションが維持できるのだ。みくりやそばを逃しても、この先の下り道を10kmぶっ飛ばせば、いそべ焼きと雑煮となめこ汁が頂ける事がわかる。絶対に順位を上げていそべ焼きを頂くのだ!
<A7 すばしりへの下り>
直後の垂直に下る道はふかふかの砂走り。タイムを稼ぐために走るが、足は残したいので、競歩選手のように上下動があまりないように、足をスライドさせて下る。そう、僕はこのためにもISUKAのショートゲイターを装備してきたのだ。砂利が入る心配は全くない。足が疲れて歩いている人、砂利が気になっている人を横目に飛ばす。
しかし、ダブルトラックが終わり、シングルトラックに入ると、霧が出てきた。道が、コースマーキングが、結構わからない。ヘッドライトの明かりが霧で乱反射して目の前は真っ白になっている。試走できない区間だから道は全くわからない。なぜならここは自衛隊演習場の中なのだ。普段は入れないがUTMFのために特別に走らせてもらっているのだ。地図上はまっすぐな線が引いてあるが、アップダウンがあるし、微妙に右に左に曲がったり、ドロップダウンしたりする。分岐も結構ある。そんな中、乱反射を嫌ってハンドライトを下から照らしてみたら、車のフォグランプと同じ原理で、路面が見える。それならとヘッドライトの照度を半分に落としてみた。そうすると、さらにクリアな路面が浮かび上がった。更に登りでは太ももに手を当ててハンドライトを低くすると、さらにクリアに路面の状況が把握できることがわかった。これはもう怖くない。
更に、コーステープが不明な時は、その先端に強力な反射板がついているため、ハンドライトを遠くに向けて左右に振ってみると、その反射板がチカチカ点滅して見つけやすい事を発見した。僕の目は老眼(遠視)だが、視力は3.0以上あり、夜目も効くため、わずかな点滅でも見逃すことはない。これで数々のコースロスト者を導き、その中で僕より早めに走れる人に引っ張ってもらい、濃霧の中をひた走った先に、A7すばしりのエイドに到着した。延長した関門時刻19:20の27分前、18:53に到着。かなり疲れてきていたんだけど、なんと、おもてなし食の、いそべ焼き!なめこ汁!雑煮!すべてが残っており、倒れて寝ているUTMFの人が大勢いる中、温かい食べ物をたくさんいただき、16分間休憩してチャージ満タン、元気に出発する事が出来ました。さらに胃薬2袋目も投入しておきました。
<A8 山中湖きららへ短縮コースを行く>
今回、STY唯一のコース短縮は、この後、大洞山へ登った直後に山中湖畔に下り、ロードを進む事。三国山と鉄砲木の頭は回避する。そして1時間延長していた関門時間は元に戻る。杓子山を考えると、このロードでタイムを稼がなくてはならない。しかし、そんな風に考えた事が後で仇になってしまた。自分の実力以上は出せない事は、SPA Trailで苦い経験をしたはずなのに。
大洞山への登り下りは、ほぼノンストップでマイペースで進めた。それで気を良くしてしまったため、その後のロードの下りでは自分のペースより早めのペースで進んでしまった。チェックしていなかった湖畔へのロードは、グネグネして予想よりも長く下っていた。足を使ったなと感じた頃、やっと湖畔へ出た。ここからが平坦路、タイムを稼ぐんだと思ったが、残念ながら予想以上に体には疲れがたまっていて、エネルギーも不足しているようだった。体から、いままであった力がなくなっていた事に気が付いた時には、走る足が止まっていて、競歩歩きもできなくなっていた。そんなばかな。悔しいが走れない。後続にはどんどん抜かれる。暗闇の中、どんどん抜かれる。上り坂など全く登れない。なんてことだ。
やっとの思いで山中湖きららに到着したが、もうふらふらだった。椅子に座るのがやっと。でも、Redbullのロング缶をもらって心がかなり回復した。これが冷えていたらもう2倍回復しただろう。でもとにかく疲れたし、エネルギーがない。
でも前半頑張って走った貯金があり、関門時刻22:20の39分前、21:41に到着していた。だからここでは初めてゆっくり休むと決めた。そして21分休み、豚汁を頂き、ピーナッツを食べ、Vespa Hyperも注入して暗闇の石割山へ出発した。まだ半分、やっと折り返しの時間がやってきた。先は長い。
<A9 二十曲峠へ石割山を登って下る>
後半戦のために、石割の湯を過ぎるまで、僕はゆっくり歩いて体の調子を整えた。山を感じ、これから楽しい時間がやってくると自分に言い聞かせた。そして試走をしているこの後吉田小学校までの道のりは、普通に抑え気味に行けば必ず行けると言い聞かせた。そして林道の登りが始まってから、競歩歩きで足を進めた。その後は一度も立ち止まらずに登り続け、石割神社からの急な登りも泥に気を付けながら着実に進み、余裕をもって石割山を越え、下りもゆっくり泥団子の下りを楽しんだ。
二十曲峠エイドに関門時間0:20の37分前、23:43に到着。ここでは、おもてなし食の豆腐と豆腐ドーナッツを頂き、この後の長い杓子山超えに備え、Starbucks VIAコーヒーを飲み、Vespa Hyperをチャージして出発した。吉田小学校まで行けば、念願の吉田うどんが食べられる。それを目標に足取りは軽かった。
しかし、ここで致命的な忘れ物をした。せっかく持参したカップラーメンを食べ忘れたのだ。しかも、ゴール後に友人のFacebookを見るまで気が付かなかった。どや顔でカップラーメンをすするんだと決めていたのに。それほど疲れて思考回路はほとんど働かなかったという事だろう。とにかく疲れて椅子に座りこんだ記憶がよみがえってくる。
<A10 富士吉田小学校へ杓子山を越える>
体は快調この上なかったが、なんだか路面が見えない。なぜだろう、濃霧か?でももう濃霧は消えていた。ん~、ライトが暗い?そう思い、暗闇で立ち止まってヘッドライトの電池を交換してみたら、まるで違うライトかというぐらいの明るさが戻った。ハンドライトも同様だった。しかし、6時間ほどでなくなったという事は、この後の6時間ぐらいを持たせなければならない。両方つけっぱなしだと恐らく持たない。下りはハンドライトが欲しい。だから登りはヘッドライトのみにした。ちょうど岩場で渋滞していたから、ヘッドライトのみで平気だった。岩場は予想を超える大渋滞だった。泥もあって急坂は大変なのだが、岩場が得意な僕には全く何のことはなかった。足を十分休ませる事が出来て良かった。
杓子山山頂では、関門が気になったのでほとんど休まずにマイペースで下った。林道に出てからは試走もしていたので、砂利道を飛ばし気味、コンクリート道を競歩的早歩きで膝を持たせながら、先を急いだ。舗装路に出てからも飛ばしたかったが、山中湖の悪夢が頭をよぎったので、時折歩きを入れながらマイペースでインターバル走をして進んだ。
そして明け方前、富士小学校へ関門時刻4:50の26分前、4:24に到着。念願の吉田うどんにありつき、おかわりして2杯頂きました。ここでは胃があまり動かなくなってきている気がしたので、3袋目の胃腸薬を投入し、2杯を食べ切り、鎮痛剤を投入した後、25分休憩して、関門11分前に出発した。正直きつい。もっと休みたかった。この先は試走しなかった霜山の登り下り。3時間でゴールまでたどり着けるのか。少し不安に思いながらも、最後のVespa Hyperを流し込み、出発した。
<霜山を超えて河口湖へ>
この3時間は、どのように考えて走ったのか覚えていないが、その風景のすべてを記憶している。それほど、どこも辛かった一方で、どこも楽しかった。
今回で最も大きい泥団子がダブルトラック上に無数に置いてあり、足を置いても避けてもヌカリ、疲れていても足の置き場やトルクを誤るわけにはいかない。夜が明けつつあり、だんだん明るくなってくると、真っ暗闇よりも見にくくなってくる。巻いても巻いても終わらない登り。自分がどの方向に向かって歩いているのかもわからない。人があまり歩かない道なのか、細くて谷側にバンクがついている道が多く、この眠くて疲れて明け方の時間に集中力を保つのがだんだん辛くなってきた。あとたった2時間なのに、体のエネルギーも抜けてきた。吉田うどんを2杯も食べたのに、僕の装備にはもうエネルギージェルも羊羹もチキンもVespaも残っていなかった。あとたった1時間なのに、残っていた生姜黒糖を口にするも激痛が走る!こんな時に知覚過敏か、歯が痛くて食べられない。すぐに吐き出し水を飲んでも激痛が走る。ばかな、こんな時に。後たった1時間なのに。
途中、パンダ君やSPA TrailのTシャツを見て声をかけてくれたスタッフに励まされて元気を取り戻して気力で進んだ。間もなく下り。後は下るだけです!の声を頂き、ガンガン飛ばした。僕はもともとMTBのダウンヒル経験がある。下りが怖いと思った事は一度もない。ただ、足を使い切るのが怖いだけ。泥団子に着地すれば衝撃は吸収され、膝が持つに違いない。
また、そう勘違いした僕はこれまで封印していたスピードで下りを駆け下りた。サイドステップと泥団子着地を使い、駆け下りても、駆け下りても湖は見えない。なんどもなんども下りがやってくる。とうとう、僕の足は根を上げた。熱を持った。そして今回一度も転ばずにゴールする計画だったが、とうとうスリップして尻もちをついてしまった。でも、これで冷静になれた。だめだ。けがをしたら最悪だ。マイペースだ。そこからはゆっくり下った。もう湖畔も近い。湖畔に下ればあと3kmだとさっき教えてもらった。あと40分ある。3kmのロードならばキロ13分。歩いてもゴールに届く。がんばって早歩きでゴールするのだ。
<とうとう河口湖畔が見えた!>
舗装路に出て湖畔が見えた時、待っていたのは、左折の指示。そしてそこは登りだった。どうやら公園に登り返すらしい。しかもダブルトラック。「マジか」そのような足も体力も残っているのか~!と3秒程考えたが、行くしかない、猛烈に太ももを押して登りを早歩きで登りきると、今度は階段の下りが待っていた。大丈夫、さっき歩いたからもう回復していた。階段も駆け下りた。そしてそこから湖畔のロード。あと何キロか聞くと、あと3.5kmぐらいですかね、とのこと。なぜか、さっきより延びてる。
もう足が動かない。速く走れない。がんばっているつもりなのに足が動かない。股が擦れて出血して足を動かすだけでも激痛が走っている。ワセリンを塗っていたけど、塗り足すか、絆創膏を貼らないとダメだ。次はそうしよう。でも今どうしよう。後25分で3kmちょっと。キロ8分以下で行かないと間に合わない。キロ8分は普段なら余裕じゃないか!しかも河口湖大橋を超えるだけ。でも今キロ7分台で走れるのか?それはそう簡単なことじゃない。僕の足はもう僕の足なのかどうかわからないぐらいの感覚しかないんだ。でもたった25分のために、これまで練習してきて19時間も進んできた事が水の泡になるのか?!そう自分に言い聞かせたとき、足が動き始めた。足が動き始めたから腕を振ってみた。なんか、走れるかもしれない。そう思ったとき、後ろから「鈴木さん、鈴木さん行けますよ~。まだまだ行けますよ。大丈夫ですよ!」との声が、追い越しざまに聞こえてきた。見知らぬその方は、なんと青ゼッケンのUTMF選手。40時間以上を走ってきて、20時間しか走ってこなかった僕を追い越し、その小さく記入してあるSUZUKIの文字を読み取り、見知らぬ僕に笑顔で応援してくれるなんて、なんて余裕なんだ。なんて素敵な人なんだ。僕の人生の目標そのものを体現しているではないか。僕は余裕のある行動ができる人になりたいんだ。
「はい!」僕は元気に答えると、河口湖大橋の緩い登りをさらに加速していくことが出来た。言葉の魔力。それをこんなにも実感したのは生まれて初めてだ。僕の身体の中にこんなに元気が残っていたのかと驚く。さっきまでもうダメだと思っていた身体とは思えない。もうどこも痛くないんだ。
そして右手に八木崎公園のゴールの白いテントが見えてきた。間に合うかもしれない。僕は走れている。そしてその喜びへの妄想が、僕の体にさらに大量のアドレナリンを注入し始めた。足は更に軽くなった。階段を駆け下りても足が動くようになった。最高だ。こんなにもアドレナリンを感じたのは久しぶりだ。初めて乗ったオープンカー、初めてダウンヒルバイクで下ったとき、子供のころ山寺の岩場に飛びついて遊んでいた時、全力で走って川に飛び込んで遊んでいた時。そのすべてを超えるぐらいに体が軽い。快調に進むと家族が皆待っていた。間に合うよ!更に足取りは軽くなった。そして皆で手をつないでゴール。沿道にこんなに観客がいるレースでゴールしたのも初めてだったので、戻ってハイタッチしたくなるほどだった。そしてゴールした後、福田六花さんが、鏑木さんが迎えてくれた。なんとうれしい事か。言葉がない。ありがとう。そして素晴らしいレースを。ありがとう。
ゴールは制限時間20時間の7分29秒前の、19:52:31でした。最後は3kmだと仮定するとキロ6分ぐらいで走れたということ。この時の僕にとっては平地であってもほぼベストタイムに近いタイムだった。本当にあきらめなくてよかったです。
ゴール時にもらえるFinisherベスト。品切れで後から郵送されてきましたものすごく実用的なベストで、山行きの時に大活躍しています。参加賞のTシャツも完走賞もNorthfaceの豪華な品なのがUTMFの大きな魅力の一つです。
UTMFでは、Liveで通過順位とタイムを見ることができる。終わってから確認すると、A7すばしりまで、いそべ焼きのために突っ走り、39人も抜いたことがわかります(笑)
あとは、杓子山からの下りもぶっ飛ばしたので、23人抜いています。どうやら下りが得意のようです。
<ゴール後>
お約束のごとく、アドレナリンが減ってきたら、猛烈にいろんなところが痛くなり、立っているのがしんどいほど。椅子に座ってくつろいでいると取材の申し込みがあったので、面倒だなぁと思っていたら、RUN+TRAILさんだと言うので快諾し、ここに書いたような、試走は大事です、という事を話しました。次回はUTMB+UTMF特別号だと思いますが、楽しみです。RUN+TRAILは、写真がきれいで記事も気合が入っているので好きな雑誌で、Amazon Unlimitedで読み放題です。写真が綺麗なので雑誌もなかなか良いですよ。
RUN+TRAIL (ラントレイル) Vol.15 2015年 12月号 [雑誌]
- 作者: 三栄書房
- 出版社/メーカー: 三栄書房
- 発売日: 2015/11/06
- メディア: Kindle版
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<装備>
レイドライト ソフトボトル EazyFlask Press to Drink 600ml イージー フラスク プレス ドリンク GRGMH15H84260 600
- 出版社/メーカー: RaidLight レイドライト
- メディア: その他
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・ハイドレは、RaidLightのソフトフラスク600ml+ハードボトル600mlの1.2L。エイドが充実しているので十分でした。次回は両方ソフトかな。走りやすく飲みやすい。
DRYMAX(ドライマックス) Trail Running 1/4 Crew Turndown М Grey×Black
- 出版社/メーカー: DRYMAX(ドライマックス)
- メディア: その他
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・ウエアは、上はTシャツとC3fitアームカバー、下はcw-xハーフパンツ+cw-xレッグカバー+DryMax 3/4 clew trail run。ブリーフで股ずれがひどく出血したので、次回はノーパンかな。
・雨具はISUKAショートゲイター、効果抜群、一度も靴を脱がずに走り切った。このゲイターは短いのにベルクロではなくゴムでしっかり止めることができ、かつゴム紐は取り換えられるのですり減って切れる心配もない優れものです。雨具はThe North Face Speedstar Hoodieを持ったけど1度のみ着用。雨天のため夜間でも湿度が高く暖かかった。
・次回はジェルを予備的に多く持ちます。今回は78kmを4つで足りなかった。あと2つは持ちたい。走り続けるためにはエネルギーが必要である事を痛感しました。胃薬は必需品です。鎮痛剤も有効。できれば普段使っているものを。
・アミノ酸の中で一番効くと思うベスパ。ただしとてもマズい。
【Amazon.co.jp限定】GENTOS(ジェントス) LED 懐中電灯 【明るさ150ルーメン/実用点灯10時間/防滴】 閃 325 SG-325 ANSI規格準拠
- 出版社/メーカー: GENTOS(ジェントス)
- メディア: スポーツ用品
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・ハンドライトは濃霧時に絶大な威力を発揮します。
※この文章は2015年10月13日にFacebookで書いたものをブログ用に修正を加えたものです。
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