※この記事は2018年2月に書いたものを手直ししたものです。
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第二回は平地のランと異なるトレイルランの登り方と下り方をお話しします。
まずは下の「キーワード」を頭に入れ、「参考動画」を見てください。
もしキーワードで引っかかるところがあったり、理屈から入りたい人は、その下に長く書いた「登る技術」と「下る技術」を読み進めてみてください。私は160km制覇のために日々研究をしているので、ちょっと長いです。
キーワード
登り:
1) 倒れるまで前傾姿勢をとって登る
2) 手で太ももを押しながら登る(パワーウォーク)
3) ミッドフット(足裏全体で着地)で登る
下り:
1) フォアフット(親指付け根で着地)で下る
2) 膝を曲げて着地する
3) まっすぐ下る
参考動画
来週月曜2/19朝9時から、BSプレミアムでトレランの特集が再放送されます。これは是非録画して見てください。月曜が鏑木さん(ウルトラトレイルの第一人者)のUTMB2009、火曜日がメキシコの走る民ララムリ(ゴム草履でアメリカのウルトラランナーに勝った人たち)です。どちらも登りと下りの技術がとても参考になります。
これですが、残念ながらオンデマンドは無いようです。。再放送はあるかも。
下記のDVDで購入できますので是非どうぞ!
- 出版社/メーカー: エイ出版社
- 発売日: 2012/01/16
- メディア: DVD-ROM
人は走るために生まれた ?メキシコ山岳民族・驚異の持久力? [DVD]
- 作者: ドキュメンタリー
- 出版社/メーカー: NHKエンタープライズ
- 発売日: 2011/10/21
- メディア: DVD
また、このメキシコ山岳民族をモデルにしたベストセラー小説は一読をお勧めします。上の番組にも出たアルヌルフォとシルビーノも出てきますが、彼らは実際に2015年に来日してUTMFを走ったのです!
だから、UTMF2015のDVDもものすごく参考になります。彼らは急な泥の登りも下りも全く滑らない。泥道をワラーチでスタスタと進みます。そこには多くのトレイルランニングの走り方へのヒントがあります。
登る技術
ここでの技術は白馬ロング50kmを走りきる足を残すのが目的なので、疲れずに楽に登る方法を述べます。白馬でいえば二回やってくるゲレンデの上りのような斜度の登り方です。
1) 倒れるまで前傾姿勢をとって登る
まず背筋を伸ばして骨盤と体幹をまっすぐにし前傾姿勢をとります。へその下あたり(丹田)に力を入れて前方に倒れる寸前まで前傾させる事で、筋肉の代わりに重力を活かして楽に登る事ができます。
2) 手で太ももを押しながら登る(パワーウォーク)
手を軽く太ももに添え、手の平の親指付け根(母指球)で太もも(大腿直筋)を押します。この時猫背にならないように気を付けてください。あくまで体幹を意識して背筋を伸ばして登ります。その時、膝上の筋肉(大腿四頭筋)ではなく後ろにある大きなお尻の筋肉(大殿筋)を意識して足を持ち上げます。これは階段トレーニングで鍛えた、あのお尻の大きな筋肉です。お尻は人間の体で最も大きく、もっとも持久力が期待できる筋肉です。これを有効に使って登る事で、大腿四頭筋を下りのために温存します。
3) ミッドフット(足裏全体で着地)で登る
登りの着地は足裏全体を同時に着地(ミドルフット)します。これは、地面に対して均一に接地する事で最低限の摩擦のみで着地して滑らないようにするためです。滑るとリカバリのために筋肉を使ってしまい、後で響いてきます。コツは、斜度に合わせて少しフロントを上向きにすることで、斜面に対してフロントもリアも均一に着地する事ができます。これは、雪道、特にアイスバーンの道を歩くときに似ています。かかとから着地する歩き方だとすぐに滑って転んでしまいますが、ミドルフットで着地すれば滑ってもほんの少し滑るだけで、踏みかえればすぐに滑らなくなります。それと似ています。ただし、摩擦度が大きく異なるため雪道程は滑りません。また、摩擦度は土質や降雨により変化するので、実際にはその時々に判断する事が必要です。
4) 心拍を下げる
登りは心拍がどんどん上昇するため、補給した糖質エネルギーを消耗します。それを防ぐために、口をすぼめてビュービューと音が出るぐらいに呼吸し、そのリズムを足の動きから非同期に速く呼吸してください。そうする事でより多くの酸素を補給する事ができ、心拍数を下げる事が出来ます。ポイントは、大きく吐くことを意識します。吐き出せばその分新鮮な酸素を吸う事ができます。心拍計付きの活動量計やランニングウオッチを装着すると、この管理が楽にでき、体力温存に役立ちます。一般に、最大心拍数は220-年齢なので、年寄り程シビアになってくるので、心拍計が重要になってきます。なお、もし持っていなくても、たとえば30才ならば、220-30=190で、1秒間に3回ドドドというところがマックスだということがわかります。また、第一回でお話しした階段トレーニングを毎日やると、登りでの心拍数を大きく下げる事ができます。1秒間にドド、ぐらいで登れるようになったら約60%で登れていますから、相当な心拍の持ち主になったと判断できます。このゾーンならば糖質をあまり使わず、脂肪を燃焼してエネルギーに変えてくれるため、長距離走では大変有利になってきます。
まとめると、重力とお尻と手の筋肉を最大限に利用して楽に登り、膝の筋肉を下りのために温存する事を心がけます。競歩選手になったつもりでリズミカルにガシガシ登ってください。登りがこんなに楽だったなんて感動!俺ってスゲー!と思うとますます加速できます。メンタルが大事です。
下る技術
下りの目的は、安全に下る事です。それは滑らない事と言い換える事ができます。滑ってしまうととにかく焦って心が折れる可能性が高くなります。よくフルマラソンはメンタルが70%と言われますが、ロングのトレランはおそらくそれを上回ります。なぜなら同じような路面に差し掛かると転倒した場面が走馬灯のように蘇ってきて、怖いから腰を引けというような誘惑がやってくるからです。それが延々と何十キロもやってくる事を想像した瞬間に足が止まる事がよくあります。そのためにもトレランシューズ任せにかかとから降りるような事(ヒールストライク走法)を避けて、足裏全体での着地と、しなやかな膝の動きを意識します。私はこれをカモシカ走法と言っていますが、忍者走法とも、ヒタヒタ走りともいわれるときがあります。カモシカや忍者が走ったり駆け下りたりする場合、ランナーとは違い、異常なぐらいに膝が曲がっています。また、最近ドラマ「陸王」で話題のミドルフット走法や、ケニアの選手や大迫選手のようなフォアフット走法でも膝が大きく曲がって着地をしていますが、あの感じも似ています。
1) フォアフット(親指付け根で着地)で下る
親指の付け根にある母趾球(足の母指球は漢字が異なるようですが、場所は親指の付け根のあたりで同じです)を意識して着地します。母趾球が体の重心を支えていて、踏む力を最大限に伝える事ができるし、バランスもとることができます。そこを起点にして踏み込みます。これでフォアフット着地(足の前の部分を意識して着地する)ができます。そしてシューズの面は平地とは異なり、下り斜面の斜度に合わせて前下がりで着地します。これは、スキーでのアイスバーンの滑り方と似ています。地面に平行に、圧力を均一に着地する事で、多くの路面で滑る事がありません。下にまっすぐ下がっていれば前方に傾けて着地し、右側が切れ落ちていて斜度が付いていればそれに合わせて右側を少し下げて着地します。
2)膝を曲げて着地する
膝を曲げて着地し、着地した後も伸び切らないでください。スキーのモーグルと似ている気がします。膝を曲げてしなやかに着地すると、仮に滑ったり、運悪く浮石に足を置いてしまっても、伸び切っていないしななやかな足で着地しているためスリップするまでの時間を長くとる事ができ、別の足で踏みかえて着地する事が可能となります。これに慣れてくると、どのような路面も安心して下れるようになります。横にも縦にも木の根っこがあるような下りであっても、基本的には踏み替えで行けるようになります。そして答えが出ずに迷ったらどうするか?答えは「とりあえずそのまま足を置いて見る」です。そしてその瞬間に次の踏み替え先を選択します。多分着地できます。スキーのコブ斜面で「とりあえず飛んでみる」のと似ています。これを繰り返すと怖いという考えを脳みそから削除する事が出来ます。それにより脳みそは安心して次の踏み替えを判断する事が出来ます。 でもこのためにはある期間の練習が絶対に必要です。徐々に練習してハードルを上げていってください。
3)まっすぐ下る
しなやかに安心して下れるようになったら、最後はライン取りはどうするか?という課題に対処します。おすすめは「まっすぐ最短距離で進む」です。サイドステップやジグザグに進路を選んで下っても、スピードは落ちますが足と膝への負担が大きく、スリップの危険も増します。さらに目線が追い付けません。それよりカモシカ走法でしなやかに下るほうが落ち着いて目線がぶれずに体力を温存できます。ぶれないから動体視力をさほど必要としなくなります。踏みかえをするその一瞬に目線が安定しているメリットは想像以上に大きいものがあります。心が安心すると足はしなやかさを保って動作してくれます。これが、疲労度が増したときの安全な下りにつながります。
4)体の中心でバランス良く着地
手はやじろべえのようにぶらんと斜め下に出して動かさず、バランスをとることだけに使うのがおすすめです。平均台でバランスをとる時と同じです。歩道の縁石で練習する事も出来ます。1つ違うのは、下っているので、左右だけではなく3次元的に重心を意識し、足の母趾球に重心が乗るように意識する事です。そうする事で、スリップする事を最小限にする事ができます。また、怖そうな下りの時は、わざとぶらぶらと手を振りリラックスするのも効果的です。「最高にリラックスしているからどんな路面でも行けるんだよね」と思うことです。これは、ビジネスにおける重要なクライアントへのプレゼン直前とも似てますよね。自分の脳みそへ暗示をかけます。「俺はすごい、絶対いける、まったく怖くない」と心の中で叫びます(笑
最後は、それでも怖そうな下りの時です。私は雄叫びをあげます。「フォー!」と一発叫べば、どんな路面でも素早い回転で踏みかえが出来て、転びそうになる事を回避してくれます。 自分ならではの落ち着くためのルーティンを見つけて実行してください。
おわりに
何か得るものがあれば試してみてください。また、もっといい方法があればぜひシェアしてください。とにかく心をリラックスさせて膝上の大腿四頭筋を温存する事で白馬ロングの完走可能性は広がりますよ。
続きは補給編です。こちらからどうぞ。
めざせ白馬ロング完走!の先頭はこちらです。
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